推論を立てて検証する遊び

1971年からBSAはUK/US仕様ともに、BSA外部のデザイン事務所Ogleのデザインしたカックカクのタンクに仕様変更した訳ですが、その兄弟とも言えるトライアンフはUSモデルに関しては旧タイプの涙滴型タンク+タンクバッジの組み合わせを採用し続けたんですね。

何でこんなアンバランスなことになったんだろう、トラがそうするならBSAもそうしたはず、と思ったのはかなり昔のこと。でも当時はまだネットで拾える情報もかなり少なくて、資料を元にそれを検証するなんて全然できなかったですわ。

今は情報も(探せば)かなり沢山見つけられる便利な時代。
そうこうしてたら、米国で納屋に長期放置されてたA65ライトニングの写真をシェアしてる人の投稿に行き当たりました。

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はいこれ。何の変哲も無いゴミバイクの写真じゃんか、って?それが実は全然そうではないんだなあ。

むしろコレが私の推論を裏付ける貴重な資料なんですよ、というところを1個ずつ拾って行きますね。

まず、こちらが1971年以降のBSAライトニングの純正スタイル。左がUKで右がUS。タンクはどっちもカックカクですわ。

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で、70年までのA65のタンクはこちら。いわゆる英車のタンクってーとこっちを想像するのが普通よね。
単体で見たらコレ付けたら良いじゃん、って思うかもしれないけど、実はタンクのフレーム逃げ部分が細くて1971年以降のオイルインフレームには付けられないのよね。

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そこで最初のバイクの別角度からの画像に戻ります。このタンク、よく見るとタンク背面中央部にある取り付け穴の位置が違いません?さっき紹介した70年までのタンクよりもえらく後ろに穴が空いてるというか。

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実はこれが大きなヒントになってるんです。このタンク固定穴の位置、実は1971年からのA75、ロケット3が採用しているタンクのそれと同じなんです。

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で、このロケット3のタンクが、何故かフレームの逃げが70年までのA65に比べてかなり広く取ってあるんですな。
それが証拠に、オイルインフレームのA65にそのまんま載ってます。(ボロバイクの写真参照)
ロケット3のフレームはオイルインではないので、太くする必然性は全くありません。なので、何故かは本当にわかりません。

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先にあったA65の70年以前タンクに比べてフレーム逃げが広いでしょ?あと、タンク固定用の穴位置もかなり後ろにズレてます。

とまあ、以上のことを踏まえて。
こっから先は私の推測ですが、実はBSA、この旧型スタイルのタンクをUS仕様のA65に使うつもりだったんじゃなかろうかと。じゃなかったらタンク取り付け部分を再加工する必要はなかったはずなんですね。
「既存のタンクを新型フレームに合わせた加工済み品で製造し始めたはいいものの、蓋を開けてみたら新型フレーム車(A65)はタンクも新デザインの物に切り替えることになってた。ありゃりゃ、どうしたもんだか、ってことでA75に急遽採用することにした」
そんなことがあったかも、と考えられる程度にはBSA/Triumphの1970年〜1971年の製造体制は混乱してたという背景もあります。何しろTriumph/BSAで共同採用することになっていた新型フレームとのフィッティングがTriumph側でうまくいっておらず、急遽Triumphのエンジン側に追加工をすることで対応してたりする程だったりします。

実際のところ、どんな理由でそれが行われ、また行われなかったのかは今やもう過去の歴史の1ページなので知りようもありませんけど、こういう推理遊びも旧車の楽しみとして大きいんじゃないかなあと思ったりしとります。